お世話になった人への手紙の返事がなかなか書けなかった。
何か、良いことを見つけて書かなくちゃ。と思い込んでいた。
思いきって、メールで近況報告をしたら、「よく頑張っていますね。」と応援メッセージをいただいた。
ちょうど6年前の今ごろの季節に、彼女を訪れた。
人里から離れた山の上にある場所だった。道の周りには、大木がそびえていた。その中に、大きなボケの木が数本あり、白い花がたくさん咲いていた。まるで、雲の上の世界に来てしまったようだ。と思った。
山の上なので、うっすらと靄がかかっていた。その中に大きな建物があった。わたしは、その15年程前に仕事でそこを訪れていた。それもまた不思議なことだった。
彼女と思いのたけを話し、分かち合いのあとには、建物の中を案内してくれた。
図書室では、多くの研究資料が納められていた。
いのりの部屋には、たくさんのシスターが静かな環境で、こころを整えていた。
広い庭にちょっと変わったオブジェが並び、岡へと向かう舗装道路は、花々で装飾されていた。ゆっくり歩いて登り切ると、きれいな納骨堂があった。
彼女は、「ここが好きで、散歩でよく来る。」と言っていた。親しかった誰かを思い出されたのだろうか。たくさんの人の名前がきれいに刻まれていた。
彼女は、「みんな家族なのよ。」と言っていた。
彼女は、大学で社会福祉学を教えていたそうだが、今は病気療養中とのことだった。
大学では、戦争孤児を何千人も養子とした女性『岩永マキ』の研究をしていた。福祉の教科書にも載る『浦上養育院』の創立者だ。
私は、自分の人生に悩みながら、
どんな風にして生きているのか?
と彼女にも尋ねてみたいと思った。