病院に勤めていた時、もう話す事も出来ない人が沢山いた。

その方は、私の話している事は、良く理解されている様だった。

その名前を図書館で調べて見ると、50年以上前の文章が見つかった。

そこに『声』という表題が付いていた。

それは当時、ラジオ放送で流された文章のようだった。

いくつか見つかった文章の中から分かったことは、彼は仏教の家に生まれたようだが、高校生の時にクリスチャンとなった。そして教師となり、校長となったことだった。

書籍からは、人を育てる事を生きがいにしておられたことが伝わって来た。

それで、

時間を見つけては、日々思うこと、嘆き、悲しみを聴いてもらっていた。

彼は、表情豊かに聴き入ってくださっていた。

どんな声で話されていたのだろうか?

 

身の回りの整理をしている。

5年前の専門書の録音を聞き直してから、廃棄したりしている。

大量にある。

 

CDから流れた音楽から、

「私は、死んでなんかいません‥♪」と流れてきた。

歌を聞きながら、銃弾に倒れた市長の為にこの歌が流されていたと思い出した。

 

うらみや嫉妬で、人生を台無しにしてはいけない。

そんな思いが湧き起こった。

そんな声がどこからか聞こえて来た。

 

 

選択

 典礼が終わって外に出た。

 さて、どうするかな。

 早春の晴天の空だが、、

 昨日も眠れた気がしなかった。

 

 足の向く方向へ、ただ歩けばいいかな。

 

 体が、自然に動き出すと、

 門を左へ出て、向かいの土手を目指す。

 雑草が、きれいに刈り取られている。よく見ると、ところどころに小さな紫色の花が咲いている。名前は分からないが、よく見かける春の花だ。

 土手を登り、見下ろすと、グラウンドの向こうに、左側から赤い電車がゆっくりと駅に停車しようとしているところだった。

 いつも通い慣れた道。図書館までゆっくり祈りながら進もうと思う。

 足取りの一歩ごとに、神を考えよ。

 考えは、超えてただ歩けばいい。

 

 歩き始めると、張り出した桜の枝にまだ硬いたくさんの小さなつぼみが見えた。

 もうすぐ咲くのだろう。卒業式が終わった後には、晴れ着姿で飾り付けた人々が、記念の写真を撮るのだろう。

 

 ゆっくり歩く歩調に合わせて、祈りも進む。

 手術を予定している友人が、術後3週間は絶対安静を強いられる。彼女のこころが平安でありますように。

 土手を降りると、左手下のグラウンドに去年たくさんの実をつけていた柿の木が見えた。

 遠くから見ても、小さな葉がところどころに確認できる。柿は、どんな花を咲かせるのだろうか?

 もう何十年も確認したくているのに、いつも実がなってから気づく。

 今年こそ、忘れないようにしようと誓い道を先に進める。

 弁慶豪が見えて来た。水が泥色だが、水面は穏やかで時折さざなみが浮かんでいる。

 白さぎが背筋を伸ばしてじっとチャンスを待っている。

 向こう側の鬱蒼とした木々の下で、黒い鳥が大きな羽を伸ばして飛び去る。

 繋がれたボートたちがお客が来るのを待っている。

 

 祈りながら坂を降り、祈りながら坂を昇り切った。

 

 もうそろそろ図書館が開く時間だ。

 

 受付の上のコンクリートに彫られた文字に『真理がわれらを自由にする』と掲げられている。

 本当にそう願いたいものだ。

 

 さてさて今日も混迷の中、

 迷路の中に没入する。

 最善を探し求めて彷徨うように、

 

 読み漁る書籍の中に、最善の手がかりを見つけるように、

 

朝やけ

 早朝、空に朝やけを見つけた。

何か良いことが起こりそうな気がしている。

 駅から、湧いてくるように先を急ぐ人々が見えてきた。

 私も電車に乗ると、席が空いている。ゆっくりした気分で、窓外の景色を楽しんむ。

 目的地につくと、ホームで小さな女性が、白い杖で少しずつ方向を確かめながら進んでいた。

 出勤時間だからか、みんなのんびりした私を追い越して、エスカレーターを早歩きで昇って行く。

 私も、若い時はそんな風だったかな。

 

 私も、今、ここで、わたしなりに一生懸命に命がけで生きている。

 

明日

 明日は、ボランティアの仲間で忘年会をすることになった。

 いつもの場所で、なんとなく茶話会の予定。

 勉強熱心な人々を思って、さっそく差し入れを考えた。

 一人ひとりのイメージから、炊き込みご飯の具材を考える。

 

かみごたえも味もよい鶏肉は○○さん

干し椎茸は、味よし風味よし○○さん

味よく白くてスマート○○さん

自然大好き、地に根を張るゴボウ○○さん

オレンジのグラデーションがキレイな○○さん

レンコンのシャキッと歯ごたえ○○さん

的確な指摘がほろ苦い銀杏○○さん

お揚げは、丁寧な工程でいい味してる○○さん

海から来ましたヒジキ○○さん

全体は、かつをと昆布の上質な味でおいしいご飯です。

 

もう仕込みは、しっかりできました。

みんなの喜ぶ顔を思い浮かべています。

明日が楽しみです。

 

 

 

 

流れ

 早朝から雲の動きが気になっていた。

何かが、起きている。

色んな流れが重なって、新たな水脈を形創るようだった。

冷たい水の流れも、どこからかの流れと混じり合って温度が変わるだろうか?

空が川のうねりのように見えて目を見張った。

こういう地球に生きているのだと、ふと思う。

 

昼過ぎに、また歩きながら日差しが暖かいと思う。空には雲一つない。風も無く、照り付ける日は北国の夏のようだ。

ふと、ふるさとは根雪になる前の吹き抜ける風が身に染みる季節だなと思う。

今、私は申し訳ないような快適な環境にいる。

 

夕方になるとまた、不思議な世界が空で繰り広げられているようだ。

 

亡くなった人々をふと思う。どんな風に私を見ているだろうか。

 

彼の地で何を話そうか、

そんなことを思った。

 

受診日

 今日は、ペットのネコの受診日です。

 リックを準備していると、ネコの勘が働いたようです。

 いつもと違う何かを察知したらしく、素早くベッドの下に潜り込んでしまいました。

 娘が、大好きなチュルルで誘いますが、反応しません。

 仕方なく、狭い隙間に手を伸ばしてしっぽを掴んで捕まえました。

 先月から呼吸困難になり、酸素吸入をしていましたが、薬で危機を脱しました。

 5種類の薬、中には苦いものがあり、飲ませては吐き出してしまい、悪戦苦闘の日々を過ごしました。

 何げない空気のように共に暮らしていたペットですが、私の帰宅する足音を聞きつけ、玄関先で「ニャーニャー」と鳴いてまとわりついていた元気な日々が思い起こされました。

 

 元気が出て、今朝は娘の手にジャレて引っ掻き傷をつけました。

 「ジャレるくらいなら、心臓は、良くなっています。」とネコスペシャリストの先生のお言葉をいただき、ひと安心です。

 スペシャリストに感謝です^ - ^

 私もネコと一緒に歳を重ねて、命をいとおしむ日々を過ごしています。

悲しむことは生きること

 タイトルの本は、福島県相馬市で原発被災者の治療に当たる精神科医が書いたものだ。

 私は、10年ほど前に沖縄のPTSDを書いた記事から、この著書である蟻塚亮二という人に興味をもっていた。

 現在は、福島で治療に当たるこの医師の内容を読み、普通の人では無いという思いに至った。

 自らの逆境体験を「ありんこサバイバル」と称して、患者とともに「あんたもえらい!ハイタッチするべ!」と言って悲しみを分かつ。

 

 

 

 私は、7月に友人を1人亡くした。沖縄で生まれた事を語りたがらなかった彼女だった。

 彼女からたくさんの書籍を頂いた。たくさんつけられている付箋。ところどころに引かれた線から、その胸中を僅かながら理解したいと思った。