同志

 妻は、すでに意思表示も出来ない状態となっていた。年老いた夫は、いつまでも自宅で妻を看たいと望んだ。「シベリア抑留から帰った。そして戦争によって青春時代を失った妻と共に生きた。妻は同志なんです。」そう語られた。

 TVドラマがあり、シベリア抑留生活は凄惨なものであったことが伺えた。

 夫は「テレビのようなあんなもんじゃない。」と残忍な思い出が心の中に去来している様だった。

 あまりにひどい話は、身内には出来ないらしく、他の家族は一度も聞いたことが無かった様だった。

 沖縄戦で生き残った家族も、トラウマとなる出来事を話すことができなかった。老人になってから、フラッシュバックが起こり再び悪夢に苦しむようになる。しかし、その苦しみは、強い薬をもってしても話すことでしか解消されない。

 誰もが迎える人生の終末期。私もそろそろエンドポイントが見えて来た。

 そろそろ同志愛にあやかりたい。