選択

 典礼が終わって外に出た。

 さて、どうするかな。

 早春の晴天の空だが、、

 昨日も眠れた気がしなかった。

 

 足の向く方向へ、ただ歩けばいいかな。

 

 体が、自然に動き出すと、

 門を左へ出て、向かいの土手を目指す。

 雑草が、きれいに刈り取られている。よく見ると、ところどころに小さな紫色の花が咲いている。名前は分からないが、よく見かける春の花だ。

 土手を登り、見下ろすと、グラウンドの向こうに、左側から赤い電車がゆっくりと駅に停車しようとしているところだった。

 いつも通い慣れた道。図書館までゆっくり祈りながら進もうと思う。

 足取りの一歩ごとに、神を考えよ。

 考えは、超えてただ歩けばいい。

 

 歩き始めると、張り出した桜の枝にまだ硬いたくさんの小さなつぼみが見えた。

 もうすぐ咲くのだろう。卒業式が終わった後には、晴れ着姿で飾り付けた人々が、記念の写真を撮るのだろう。

 

 ゆっくり歩く歩調に合わせて、祈りも進む。

 手術を予定している友人が、術後3週間は絶対安静を強いられる。彼女のこころが平安でありますように。

 土手を降りると、左手下のグラウンドに去年たくさんの実をつけていた柿の木が見えた。

 遠くから見ても、小さな葉がところどころに確認できる。柿は、どんな花を咲かせるのだろうか?

 もう何十年も確認したくているのに、いつも実がなってから気づく。

 今年こそ、忘れないようにしようと誓い道を先に進める。

 弁慶豪が見えて来た。水が泥色だが、水面は穏やかで時折さざなみが浮かんでいる。

 白さぎが背筋を伸ばしてじっとチャンスを待っている。

 向こう側の鬱蒼とした木々の下で、黒い鳥が大きな羽を伸ばして飛び去る。

 繋がれたボートたちがお客が来るのを待っている。

 

 祈りながら坂を降り、祈りながら坂を昇り切った。

 

 もうそろそろ図書館が開く時間だ。

 

 受付の上のコンクリートに彫られた文字に『真理がわれらを自由にする』と掲げられている。

 本当にそう願いたいものだ。

 

 さてさて今日も混迷の中、

 迷路の中に没入する。

 最善を探し求めて彷徨うように、

 

 読み漁る書籍の中に、最善の手がかりを見つけるように、