アディショナル‐タイム

 昨日は、日差しが強くやや汗ばむ日となった。  

 夕方、町内の防犯パトロールの時間。涼しくなり風が出ていた。警察OBを含めて、総勢10人程が集まった。それぞれ拡声器や防犯灯、拍子木を携えて一時間程巡回する。

拡声器で「還付金詐欺に注意して下さい。暗証番号は絶対教えないでください。」と言った後に拍子木を“カチカチ”と鳴らしながら歩く。町会長が、先頭を歩きながら「拡声器の後の拍子木のタイミングが少し早い。もう年なのでゆっくり一呼吸置いてください。〇〇歳なので、、」と笑いながら言う。仕事疲れが見て取れる拍子木係は、「呼吸が合わなかったね。」と笑みを浮かべて、真剣な表情に変わり慎重にタイミングを計る。

狭い路地に車が通る度にOBが「はーい。車が通ります。」と皆に声をかける。また車かなと思ったら、上空を飛ぶ飛行機の騒音だった。最近は、車のエンジン音の方が静かだと気づく。

 寄り合うとすぐにおしゃべりが始まるから、移動に時間はがかかる。誰かが選挙ポスターの前で、これは何だろうか?と疑問が湧く様な個性的なものを見つけると、それぞれ思いが飛び交う。「何だろうね?わかんないねぇー。」ポスターは、皆の視線を集めるが、何を訴えたいのか分からない。「この人芸能人の○○に似てない?」「ああ、ホントよく似てる。」私も選挙ポスターをこんなにゆっくりと眺めることはなかったと思う。

 ゆっくりし過ぎて、誰かが「もう一時間たっちゃったよ!」と声を張り上げる。巡回中だったと気づき、また隣の人とよもやま話をしながら歩く。

 巡回は、たっぷりと一時間かかった。

 自宅までの帰り道、薄曇りの上空には、3度目の飛行機の騒音が聞こえていた。