気づかなかった風景

 時間ばかりに気を取られていました。開催時間に遅れれば、相手の方に迷惑だと思ったからです。

 しかし、それが考えすぎであると思い直しました。少しばかり遅れても、心の広い彼女は、穏やに迎えて下さるかただからです。

 私は、15分も遅れて到着しました。しかし彼女は思った通り「私もさっき来たばっかり。」と言われ優しい笑顔を向けてくれました。

 こんな穏やかな人と、何でも心置きなく本音で話せる事は、奇蹟の様です。

 私はこれは、きっと新しい物語りが始まるに違いないと思うのです。

 会が終り、帰り道は「桜坂を通って帰ろう。」と誘われました。

 急いで気づかなかったのですが、歩いて来た道には、たくさんの桜が咲いていました。

 その夜には、

 たくさんの人の幸せを願う彼女の思い。そして満開の桜が提燈の明かりに優しく照らされていました。