信仰

 人の言う事を仰ぐと書くんだなぁー。そんな事を考えながら図書館まで歩いていた。

 図書館までの往復一万歩で、今日の目標の一つは達成できる。

 数日間続いた雨が上がってひんやりとした風が吹いていた。桜の花びらがはらはらと舞う。弁慶濠のほとりの木々には黄緑色の若芽が伸びていた。

 お濠の水面がゆらゆらと静かに揺れている。水辺が好きな私は、ジッと眺めてしまう。ボートに乗った釣り人が釣り糸を垂れて静かに獲物がかかるチャンスを待っている。

 図書館は、検温なしで入館できるようになっていた。人も少なくて安心して読書が出来る。

 気になっていた二冊は、大切な事が書いてあるような気がして、少し時間をかけて読もうと思った。

 一冊は70年前に書かれたもの。序では、戦争で全てを奪われても、なお微笑みだけは奪われなかった魂の平安の物語り。

 もう一冊は、37年前に書かれた。この本のはじめにを読むと、筆者の誠実な性格が綴られている。

 友人が言った。「本を書く人は愛があると思う。」そんな言葉を思い出した。

 明日も時間があるので朝から出かけようと思う。

 帰り道、外は少し暗くなっていた。でも寒くはない。遠くに見えるビルに明かりが見えている。5年前上京した時、四角い花火みたいにきれいだ。と思ったことを思い出しながらゆっくりと歩いた。

 帰宅してから辞書を見る。言は、言明(ハッキリ言う)の意。信は「人∔言」で、一度言明したことを押し通す人間の行為をあらわす。とあった。

 間違ったことを言う人を信じてしまったら、大変なことになるなぁ。ちゃんと見極めて行かなくちゃ。という所に落ち着いた。