馬鹿

 桜の季節になると思い出す事が沢山あります。九州に居た頃、在宅で療養する患者さんを車いすに乗せ、よく桜を見に行きました。それも困難な情況になると、病院で咲いている桜の枝をもらって持って行きました。 「去年も持って行ったわね。」毎年、お願いしていたので覚えられていました。

ある年の春にいつもお願いしていた院長が亡くなってしまいました。今度は、事務長に「桜の枝をもらっていいですか?」と尋ねると「あのね桜の枝折る馬鹿、梅の枝折らぬ馬鹿と言うのよ。」と言われてびっくりしました。私は馬鹿と言われてしまった。と思ったからです。でも「いいわよ。」と言ってくれたのでもって行きました。

ある時、インターネットを見ていて、馬鹿と言われた意味が分かりました。桜は、折った所から病気になってしまうこと、逆に梅は折られることで丈夫になるらしいのです。私は、自分のことを馬鹿と言われたと思い込んでいたのだと笑ってしまいました。

北関東で働いていた若い時にもよく「ばか、バカ」と言われていました。しかしそれは、挨拶の様に親しみを込めた言葉でした。受け取り方によって言葉はいかようにも変化するものの様です。