8才

 長年撮りためてあったホームビデオは、老後の楽しみにしていたものでした。しかし私は、もう既に老後といわれる年齢ですが、いまだに落ち着いた時間が取れていません。

 娘が先日、古いフイルムを業者に頼んで編集したものを見せてくれました。そこに写っていたのは、ちょうど20年前の家族の姿です。

 8才の娘は、ご近所の友達と2人で毛布をマントにして「タンスにゴン!ようきくねん!何年経っても着られんねん!」と繰り返して、楽しそうに踊っています。ちょうど娘の前歯が一本だけ抜けていて、成長の軌跡もわかります。

 ビデオの場面が変わり、夫が娘に算数を教えています。夫は、「これ、違うでしょ!そこじゃないでしょ!」ときつく言葉を投げています。驚きました。これは、虐待というものでは、無いかしら?今からは想像も出来ない様なスパルタ振りです。

 また場面が変わって、次は夫が娘のコップにアルコールに見立てたお茶を注ぎ、それを飲んだ娘は、酔っ払った振りをするというコントでした。何をやってるんだか、私も見ていて思わず吹き出しました。

 またも驚いたのは、そこに私の母の姿があった事です。孫娘のおどけ振りを見ていて、こらえきれなくなって笑いだしていました。

 私は今、母の子供の頃の話を聞き、物語に落とし込むという編集作業をしています。

 母は、ちょうど8歳の時が終戦北方領土からの引き揚げ者です。孫娘をみていてどんな気持ちでいたのでしょうか。 

 そして私は今、この時の母と同じ年頃になっています。たわいもない事が、不思議な感じに思えました。