銀杏

 雨の日が続いていましたが、今日は雲間に太陽が除いて、涼しい風が吹いていました。

 いつもの散歩道に時々、淡いオレンジ色のかわいらしい小さな銀杏の実が落ちていました。

 老夫婦がそれを眺めています。

 ちょうど去年の今頃、娘と二人でこの道で落ちた実を拾い集めていた時、老夫婦に声をかけられました。

 そして、近くの公園の銀杏の実が一番大きい。と情報を得て、そこでまた拾い集めました。

 娘によるとその役は、いつも夫(義息子)がやっていると話しました。

 私は、一年があっと言う間に過ぎてしまったことに驚きます。

 それから、家族が一人減ってしまった寂しい思いも湧き上がりました。

 

 昨年は、銀杏で少しかぶれたこともあり、今年はやめて置いたほうが良い。と気をつけていました。

 でも、公園へ寄ってみるともうすでに、種だけが剥き出しになっていました。

 それで、扱いやすい種になっているものを拾いました。

 自宅に帰ってから、種を洗って干すと一人の老女を思い出しました。

 息子さんは、若くて腕の良い日本料理の板間さんでした。自慢の息子でしたが、急性白血病で急死してしまい、それからご自分も心臓の病を抱えたとのこと。

 彼女は、銀杏の料理をする息子さんの様子を教えてくれました。

 実を金槌で割ってから、フライパンに数センチのお湯の中に入れて、お玉の丸い所で実を転がすようにすると薄皮がきれいに取れます。

 その話しを思い出しながら、茹でた銀杏は、薄緑色の宝石のようにきれいです。

 早速、他の具材と一緒に炊き込みご飯にしました。

 

 夕方空を観ると、絵画のように複雑な形の雲間に、青空が除いていました。

 私は、遠い昔にも観た秋の空をまた思い出しました。

 炊き込みご飯は、人生のようだ。と聞いた話しを思い出します。

 銀杏の僅かな苦味も、味付けの一つになりそうです。

 そして先日、老いた母も炊き込みご飯が得意料理の一つだと話していました。