便り

 朝、家事を済ませてしっかり朝食を摂った。身支度を整えて7時に出かける。

 西に向かって歩くと大きなお寺の前の道路は、掃き清められ打ち水の跡が残っている。

 空のちぎれ雲には、オレンジ色の光が当たっている。目を凝らして見ると、それは上方のオリエントの方角から注がれている。

 歩きながら感じる風の冷たさは、北国の雪解けの春を思わせた。

 連祷しながら歩き続ける習慣は、その魅力に取り憑かれてもう15年以上続く。

 だんだん明るくなるこの季節には、特に力を込めていた。

 そして、この旅の目的が見え始めた。

 電車に乗ってまた歩き、事務所に着くと汗をかいている。

 昨日、夫が「10年振りの寒気がやって来る。」と言ったのが意識に残っていた。それで、大きなカイロを背中に貼っていた。

  北国生まれの無意識な防御だろうか?しっかり防寒しなければ、生きられないと体が記憶している。

 今は、雪も降らず歩くのも楽な生活をしている。だから北国の人に申し訳ないような気がした。

 夜になって、明日の打ち合わせがあることを思い出した。人生最大限の難題が待ち受けている。

 しかし、歳を重ねた疲れが身に染みるようになった。

 だから、少し楽をしようと考えて、夫に参加をお願いして協力してもらうことにした。