サイレントメンセージ

 長年お世話になっていた人は、施設に入っていました。もう30年来のお付き合いでした。しかし、コロナ感染でしばらく面会が出来なくなっていました。

 近くに来ていましたが、いつも気になりながら恐くて足が遠のくのです。 

 しかし今日は、直面化しなければならないと思いました。

 勇気を出して、まず近くの公園まで行き、こころを整えました。

 そして、受け付けに面会を申し込みました。予約をしていなかったので、係りの方がさらに他の方に確認に行ってくれました。

 私は、久しぶりに会えるかも知れない期待で胸が躍りました。何を話そうかしら?

 

 しばらくして、別の方がこられパソコンで名前を調べて戻られました。

 そして、落ち着いた表情で、

 「個人情報なので言えないのですが、現在のところその方のお名前はありません。」との事でした。

 

 高齢であったため、「私が亡くなっても、知らせないからね。家族だけで全てを済ませるからね。」と言われていました。

 私は、実際にそれを確かめました。

 やはり、、、

 気づけば、

 自分も、人生に積み残した課題に取り組む時期になっているのだ。と教えられた気持ちでした。

 彼の地でお会い出来た日に、お土産話しを持って行がなければならない人が、またひとり増えました。

 

 帰り道。

 

 お天気が良く、桜の舞い散る公園には、幼い子どもたちがたくさん集まっています。

 穏やかなお花見日和でした。

私は、はかない人の命をかみしめながら、さか道をゆっくりと降りました。